WEB公募という初めての試みを行った昨年、これまでAPAアワードとは距離のあった幅広いジャンルの人たちからの応募が増え、コンテストのあり方も大きく様変わりしたといえる。本年度も引き続き、WEBで作品を受け付けることで、エントリー数が前年比1.3倍へと大幅に増えた。ただ数が集まっただけでなく、写真を記録から一段引き上げた表現へと昇華させた作品が数多く見受けられたことに、驚きと喜びを感じている。
今回は「私の写真」という自由度の高い募集テーマだったため、応募者のなかには戸惑う声もあったようだが、結果的には思いのほか自由に自己表現がなされていたように思う。審査にあたり、5名の審査委員のファーストチョイスがバラバラだったこともまた、「私(=審査委員それぞれ)の写真」という多様性、あるいは個性の表れだったといえるかもしれない。上位入賞を選ぶ際は、それまで割れていた意見が衝突もなく、すんなりとまとまったが、やはり入賞作を決めるのは、審査する側も緊張を強いられる作業ではある。
文部科学大臣賞を授賞した小園井和生さんの「景色の飽和」は、8枚組で、一見するとバラバラで統一感がないように思える。が、この8枚には作者のもつ儚い世界観が表されており、まさに写真による自己表現の自由、それを具現化したような組写真ではないか。今後、写真に求められるであろう、写真のあり方のある一面がこの作品から垣間見えた、などと評したら少し大袈裟だろうか。最終的に審査委員全員一致で、この作品に決定した。
SNSの普及で、コミュニケーションツールとしての写真が一層身近になった今だからこそ、表現としての写真のあり方が問われている。目の前の出来事を、事象を記録することの先に、写真でしか残せない決定的瞬間を、心象をカタチとして表現する。その表現としての写真を、そして、写真を使ったあらゆる表現を追求するフォトグラファーたちを、今後も応援できるよう、APAアワードもさらに変化し続けていきたい。

舞山 秀一
公益社団法人日本広告写真家協会
理事