FEATURE FEATURE APA編集部

森山将人「HOTEL MINERAL」

広告分野で活動するフォトグラファーたち。彼らが手がけたパーソナルワークを紹介するとともに、その制作秘話をインタビュー形式で語ってもらった。

 

 

広告、雑誌などで活動する森山将人。パーソナルワークのテーマとして選んだのは、近年じわじわとブームになりつつある鉱物だ。
その魅力に惹かれたは写真作品を通して、プロダクトとしての新しい見せ方を提案する。

森山将人

 

─鉱物を撮影するきっかけを教えてください。

森山 鉱物収集は僕の趣味の1つなんです。希少植物もコレクションしているし、もともと収集癖があるんですよね。

鉱物は種類も豊富だし色や形もきれいで、ブツとしてもとても魅力的です。以前はマニアやスピリチュアル系の人が注目していましたが、最近は一般層にもファンが広がり、ちょっとした鉱物ブームになっています。

でも、いざ買ってみようと調べると、会社の応接室に置いてありそうな観賞用の方が圧倒的に多いんですよ。はっきり言ってしまえば、オシャレじゃない(笑)。それは写真にも同じことが言えて、白か黒の背景で資料的な撮り方をしているものばかりで、こちらが求めるイメージとは離れているんですよね。

森山将人
それなら写真を使って、鉱物自体の見せ方を変えるだけで、もっとカジュアルに多くの人に興味を持ってもらえるんじゃないかと考えたんです。

例えば、最近観光地の土産物屋でもすごくおしゃれな店をよく見かけますよね。ディレクションを加えたことで全く新しいお店に生まれ変わって新しい層のお客さんが増えている。

それと同じように、見せ方を変えることでインテリア好きな層も、かわいい・素敵と感じるようになって欲しいなと。個人的な鉱物ファン普及活動ですね(笑)。

─そもそも鉱物とは宝石になる前段階の石なのですか。

森山 質が良い鉱物は加工されて宝石として流通しますが、一般的に鉱物として販売されているものは宝石にはなりません。宝石にならないからといって、魅力がない訳ではなく、鉱物には高価な宝石にはない魅力があります。

手が加えられていない天然物なので、形や色も1つとして同じ造形がありません。 
同じ種類の鉱物でも、その形や透明度で価値が全く違うのも面白い。中には、特定の鉱山でしか取れない希少性が高いものがあったりして、コレクター心がくすぐられます。収集癖がある人は、レアなものをゲットしたくなるし、性別問わずハマる人は多いんじゃないかな。

森山将人
─このシリーズでは、山梨宝石博物館の展示物を撮影しているそうですね。

森山 たくさんの種類を撮影するために、協力をお願いしています。

普通、博物館での収蔵品撮影といえば、厳密な色再現を求められますが、この作品は、資料写真ではなく鉱物を素敵に見せることに重きを置いています。館長さんにも、そのコンセプトにご理解いただいているのでとてもありがたいです。

森山将人

─撮影方法は?

森山 外部へ持ち出すことはできないので、展示スペースに撮影セットを組んで撮っています。ごくシンプルに、アクリル板に鉱物をのせ、上下にLEDライトをセットして、必要に応じて左右からあてる程度です。

市販のバック紙はイメージに合うものが少ないので、A3サイズで自作しています。撮影現場にもプリンターを持参して、原石に合わせた色でバック紙を作りました。色の組み合わせでグラフィカルに見せるのは作品のポイントなので、こだわっています。

 

─今後の展開は?

森山 まずは作品数を増やして、写真展を開催したいです。

写真だけでなく、現物と一緒に展示して販売もできたらいいなと。ファンを増やしながら新しい展開を考えたいです。

森山将人

 

森山将人 Moriyama Masato
TRIVAL所属。カタログ、雑誌撮影のほか、MVや短編ドラマの撮影など動画撮影も手がける。
masatomoriyama.com
Instagram:@moriyamamasato

『コマーシャル・フォト』2022年2月号より転載