APAアワード2024 「写真をみる」レポート ー審査から展示まで
こんにちは。APAアワード2024 関連企画「写真をみる」レポートを担当するエズミユウシです。
この企画では私がAPAアワード審査の流れを疑似体験することで、「写真をみる」ことについて考えてきました。
実際のAPAアワード審査は、まずオンライン一次審査で入選作品を選びます。二次審査では入選作品をプリントし、審査委員はその中から12点の入賞作品を決定しています。私もまた審査委員と同様に、オンラインで全応募作品を「みて」、そこから選ばれた入賞作品をプリントで「みて」、最後に展覧会会場で展示作品を「みる」という流れを体験しました。
その流れの中で応募作品はモニタ・プリント・壁面展示と、その媒体と状態を様々に変えながら人々にみられることになります。このマルチメディア性は、現代の写真が置かれた状況を物語っていると言えるかもしれません。審査から展示発表までの媒体の移り変わりの中で印象に残ったのは、パソコンのモニターで作品をみたときと、展覧会場の壁面でみたときの印象が意外にも近いところでした。写真が地面に対して水平に置かれているか、垂直に設置されているかという要素は写真の印象に大きな影響を与えるようです。私達が普段目にするイメージの殆どが垂直に設置されていることを考えてみると、美術館の壁に掛けられたイメージは非日常ではなく、とても身近でみやすいものになっていると言えるかもしれません。
さて、今回のAPAアワードの写真作品部門応募数は1377作品にのぼりました。その全作品をみるというのは、言ってみれば1377通りの切実さと向き合うということですから、数字が物語る以上に大変なものでした。体験してみて感じたのは、そもそも作品同士を比較して選ぶことが特殊な行為だということです。この特殊さ故の負担を審査委員に負わせ過ぎないために、審査では作品に優劣をつけるというより審査委員それぞれが良いと思ったものやひっかかりがあった作品にチェックを入れるという形式での評価積み上げ型システムが採用されています。また、平均点的評価になりがちなこのシステムが取りこぼしかねない部分を掬うために各審査委員による個人賞が設けられているとも言えるでしょう。
そして、コンテストではまた別の「特殊な見方」が生まれます。それは「選ぶためにみる」ことだけではなく、観客が作品を「選ばれたものとしてみる」ことでもあります。
更にこれらに加えてもうひとつ、応募者が選ばれた・あるいは選ばれなかったものとして自分の作品を見返すという「みる」もあると思うのです。この「みる」は、足りなかった部分を分析したり、客観的な評価として受け止めるなど、応募者がいろいろな形で今後の制作に活かすことができるものです。しかしコンテストの結果が作品自体を変化させることは決してありませんから、あくまで自分の制作を第一とし、その良きフィードバック・友人としてコンテストと結果を活用することが大切になるでしょう。
ここ数年、写真を取り巻く状況は目まぐるしく変化を続けています。写真賞やコンテストも何度目かの地殻変動を迎えていると言えるでしょう。今回のインタビューとレポートが、こうした状況の中でコンテストについて考えるための一助となることを願っています。
展覧会会場撮影:星野耕作 ナカムラヨシノーブ
レポート執筆:エズミユウシ |
Profile 写真を用いた制作を行う傍ら、「写真について」という小冊子を制作・配布している。その他、展覧会レビューや、未邦訳文献の一部邦訳と解説、映画の紹介・上映会など。 web site:https://outta.portfoliobox.net/ |
※ APAでは公募展事業を行う中で、批評や文字として伝えることも写真文化の発展に重要と考え、昨年より公募展に合わせたレポート企画を行っています。今後も実施予定ですので、ご興味ある方は大学などで募集案内がありました際には、是非ご応募ください。