写真制作についてと授賞の喜び INTERVIEW apa_editor

APAアワード2023  文部科学大臣賞受賞者 インタビュー

第51回日本広告写真家協会公募展APA AWARD 2023が2月25日(土)〜3月12日(日)まで東京都写真美術館にて開催された。写真作品部門の入賞・入選全123作品がパネル展示され、今という時代の空気を捉えた作品が並んだ。その中でも、文部科学大臣賞に輝いた「景色の飽和」は、8枚組写真の構成や切り取り方に物語を感じる深みのある作品だった。撮影したフォトグラファー 小園井 和生氏に授賞作品について語ってもらった。

写真作品部門  文部科学大臣賞

フォトグラファー : 小園井 和生
「景色の飽和」 8枚組作品

日常の中から現実と非現実を探る

  応募のきっかけを教えてください。

小園井 APAアワードへ応募したのは、今回が初めてです。公募テーマ「私の写真」が、制作中の作品テーマとちょうど重なっていたことと、今後写真を続けていく上での自信につなげたくて、応募しました。作家活動を続ける上で、私の作品がどれほど多くの人から共感を得られるのかを知るきっかけも欲しかったんです。

 受賞作「景色の飽和」について

小園井 3年間撮り溜めた友人の写真や風景から構成しています。元々は30枚ほどで構成してZINEにまとめた作品です。APAアワードではその中から象徴的な写真をピックアップして応募しました。

学生の頃から、「日常の中にある現実と非現実の境界線を探る」をテーマに、作品を制作してきました。この作品もその流れの中で撮っています。私達が過ごすありふれた日常の中にも、フィクションのような一瞬があると思っていて、それを探りながら切り取った作品です。繰り返される日常はどうしても退屈に感じがちですよね。その「退屈」を遮るようにシャッターを切って写真に記録しました。3年という時間やそこで起きた出来事、経験と結びついて、これからの未来にも続いてくそんなテーマで撮影しています。これからも引き続き撮り続けたいテーマです。

私は、作品=自分自身だと考えています。写真表現が「鏡派」と「窓派」に分けられるなら、私の作品は「鏡派」。写真に感情や想いは写りませんが、前向きだったり、楽しい状況で撮った写真は“色”がのると思うんです。“色”というのは、モノクロかカラーかではなく、血が通っているか否かという意味です。

私の作品は淡々としていて、一見すると血が通ってないようにも見えがちですが、実は細い糸のような芯があって、それが写真の軸になっていると思っています。切れてしまいそうなほど繊細な感情の起伏によって、その軸は大きく揺れてしまう。良くも悪くもその揺れは、私自身の撮影する時の感情は作品にも大きな影響を与えると考えています。

 写真を始めたきっかけは? 

小園井 撮り始めたのは高校生の頃です。当時、部活動がとても楽しかったんですよ。その楽しい時間を記録しておきたくて、「写ルンです」で綺麗な景色や友達のスナップを撮っていたんです。でも撮る枚数が多過ぎてプリントが大変で(笑)。たくさん枚数が撮れるデジタル一眼レフカメラを購入しました。最初は趣味から入りましたが、本格的に写真の勉強をしたくて、高校卒業後は写真専門学校に入学しました。 

写真専門学校を卒業した後、ブライダルフォトの撮影を中心に取材写真、商品カット撮影などフォトグラファーとして仕事をしながら、作家活動をしています。ブライダルの仕事は、土日に仕事が集中するので、作品制作の時間が確保しやすいんです。今は仕事での写真と作品は別のものですが、いつかは自分の作風を仕事に繋げていきたいです。

今回の賞をいただいたことで、写真の活動に自信が持てました。作品は、自分自身のために撮っていますが、もしそれが誰かのためになるのであれば、とても嬉しいです。

 

おそのい・かずき

2016年日本写真芸術専門学校 研究科卒業後、独立。作品に「水のかたまり」(2018)「そこに存在したこと」(2019)などがある。20226TOKYO BRIGHT GALLERY立ち上げに参加。

 kazukiosonoi.com

                                      

小園井さん制作のZINE「景色の飽和」
38P50部限定