APAアワード2023 経済産業大臣賞受賞者 インタビュー
広告作品部門 経済産業大臣賞
フォトグラファー : キム ヤンス(yansuKIM)
養老ミート 「飛騨牛養老ミート50周年」 4枚組作品
A&P=ピースグラフィックス+スタジオディテイルズ CD+AD=平井秀和
CD=瀬川真矢 C=山中彰 プロダクションCD=服部友厚
プロダクションAD=中村文隆 プロダクションPr=北川裕紀乃
最高ランクの飛騨牛を迫力で撮り下ろす
受賞作の企画について教えてください。
キム 飛騨牛を扱う岐阜の会社 養老ミートのリブランディングの一環で撮影しました。元々この企画はWebをメインにしたリブランディングだったので、これほど大きなポスターになったのは、とても嬉しかったです。このポスターの他には、商品カットや人物撮影も担当しました。撮影のために、岐阜へ2年ほど通い続けたかいあって、飛騨牛についてもずいぶん詳しくなりました(笑)。
撮影についてお聞きします。
キム できる限り一発に近い状態で撮りたかったので、牛舎の外で背景に赤色幕を垂らして撮影しています。 被写体の牛は、肉質の良い飛騨牛という視点で養老ミートの専務と生産者の方に選んでいただいた1頭です。
牛はとても繊細で、ストレスがかかると肉の品質が落ちてしまうそうなんです。負担をかけないようテスト撮影せず短時間で本番撮影しました。ライティングはごくシンプルです。牛に向けたメイン1発と、トップから逆目と背景用でそれぞれ打っています。牛は毛艶があまり良くない方が肉品質が良いらしいんですよ。でも、フォトグラファーとしては、ハイライトを入れてきれいに見せたい。試行錯誤した結果、毛並みや艶もきれいに出せて良かったです。
牛ってすごく瞳がきれいでかわいいんですよね。でもこの撮影の後、この子は立派な商品になるわけで…。複雑な気持ちになりつつも、この子にとっては、このカットが遺影でもある。だからこそ、絶対きれいに撮ってあげようと思いました。
背景には飛騨の山々のカットが使われています。
キム 背景の山並みを牛の背中に組み込んでいるんですよね。この背景カットは、山の凹凸が牛の背中に似てるなとフッと思い立って、撮影したカットなんです。それをアートディレクター平井秀和さんが、ポスターの中にうまく取り入れてくださった。言葉で提案せずとも、阿吽の呼吸のようにポスターデザインに組み込んで仕上げていたのを見て、とても感動しました。
受賞の反響は?
キム いろんな撮影現場で、お祝いの言葉をいただきます。注目度が高い賞なので、僕自身を知っていただけるのも嬉しいですが、このポスターを通じてクライアントや飛騨牛も改めて話題になれば嬉しいです。
企画当初は、商品になる牛を被写体にするのはかわいそうだと、批判もあるかもしれないと不安もあったんです。でも、賞をいただけたことでその不安は解消されました。命をいただくことについて、改めて考えるきっかけにもなればいいと思っています。
普段の仕事について教えてください。
キム ブツ撮りやシズル撮影などスタジオワークが多いです。他にもロケやポートレイト、映像撮影など、撮影範囲は広いほうだと思います。 一昨年、会社を立ち上げ、恵比寿にスタジオ兼事務所を構えました。今はスタートアップベンチャー企業の仕事が多く、企画から関わらせていただくこともあります。
アマナでのアシスタントを経て、独立する時、「note」に経歴や独立への想いややってみたい仕事について文章を投稿していました。ネットでフォトグラファーを探すクライアントやデザイナーに向けて、自分から発信する仕組みを作ったんですね。その狙いが当たり、話題を集めて2日間で10万ビューも閲覧がありました。その影響もあってか、ありがたいことに独立後すぐに依頼をいただき、今もお仕事をいただいています。
今回の受賞は、広告フォトグラファーとして認めていただいたような感覚で、とても気が引き締まります。この受賞をきっかけに、活動の領域を広め、より多くの人に届く作品や広告を撮っていきたいと思います。
きむ・やんす amanaグループacubeにてシズル専門の静止画・映像撮影チームを経験後、独立。広告写真を中心にCM、MVなど映像の撮影・ディレクションも手掛ける。 |