APA AWARD2022 受賞者インタビュー APA AWARD APA編集部

受賞をきっかけに、広島発の広告クリエイティブを全国へ

広島パルコ「こころまでステイしてたまるか。」でAPAアワード2022 広告作品部門 最高賞 経済産業大臣賞を受賞した元 圭一さん。広島を拠点に活動する元さんに、撮影について、応募のきっかけ、フォトグラファー活動について話を聞いた。

少人数のブレストから生まれた「こころまでステイしてたまるか」

ー受賞作品について教えてください。

 2020年コロナ禍でのステイホーム時期に制作した広告です。日本中で好きな洋服を着て外出することや、人に会うことも自粛になり、ファッションを楽しむ機会が一気に減ってしまいました。先が見えない不安もあり、世の中全体が落ち込んでいるような時期でしたよね。

そんな時、広島パルコ発信で、ファッションの力で世の中を明るくしようということになったんです。コピーやビジュアルの方向性は、クライアント担当者と僕、アートディレクターといった少数によるブレストの中で生まれました。

コピーが決まった後、ではこの感情や意思をどうしたらビジュアルで表現できるのか、を探っていきました。
撮影場所は極力要素が少ない場所を選び、衣装は鮮やかなオレンジカラー。人を元気にするような色を身にまとってもらい、自由に動いてもらいながら、力強さや躍動感を感じさせる絵を捉えました。

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広告作品部門 経済産業大臣賞「こころまでステイしてたまるか。」(5枚組作品)
Advertiser:株式会社 PARCO 広島店
P:元 圭一 CD:清水航・酒井彩 AD+C+D:大井健太郎 HM:小田徳子・小田菜美 ST:荒谷かおり Production:株式会社LifeMarket

 

 

 

 

 撮影日は小雨がパラつく曇り空でしたが、それが良いエッセンスになったと思います。晴天の真っ青な空では、ハッピーすぎる雰囲気になっていたかもしれません。曇天の空、衣装カラー、背景、モデルの動きから生まれる躍動感、コピーが一体化して一つの作品になりました。

受賞によって人脈や仕事が広がる

ーAPAアワードへ応募するきっかけは?

 地方発の広告クリエイティブを多くの人に知ってもらいたくて、10年以上応募を続けています。

僕は広島を拠点に活動していますが、全国レベルのアワードで受賞につながれば刺激にもなるし、何よりクライアントや制作スタッフも喜んでくれて、制作へのモチベーションも上がります。年1回APAアワードへの応募は、仕事を振り返るアーカイブにもなるんですよ。

ありがたいことに過去複数回受賞歴から名前を覚えていただいて、それをきっかけに仕事が広がるのが嬉しいですね。

広島を拠点に多方面で活動

ー普段の仕事について教えてください。

 撮影では観光系が多いです。被写体は風景と人。人の表情も風景も、撮影中にどんどん変化していくじゃないですか。その変化や動きを写真で捉えるのが好きなんですよ。

広島では写真事務所と企画制作会社を経営しています。写真事務所では、フォトグラファー3人、映像編集スタッフ3人、制作担当1人がいるので、撮影全てを自社で完結できるようにしています。

今後、広島・瀬戸内エリアでのロケーション撮影をもっと広めたくて、瀬戸内エリアのロケコーディネート会社の立ち上げも準備中です。

よくこのエリアをロケ場所に使いますが、自然が豊かでとてもいいんですよ。フォトグラファー目線で見ても、このエリアは温暖で海も山もあるし、撮影しやすい環境だと思います。

 

ー経済産業大臣賞とあわせて受賞された【美しい日本賞】(株)サクラオブルワリーアンドディスティラリー「SINGLE MALT JAPANESE WHISKY 桜尾&戸河内」(6枚組作品)も広島の自然のなかで撮影されていました。

 

美しい日本賞
「SINGLE MALT JAPANESE WHISKY 桜尾&戸河内」(6枚組作品)
Advertiser:(株)サクラオブルワリーアンドディスティラリー
P:元 圭一 CD:久保雄司 AD:中 将哉 D:岡田愛未 ST:豊田理恵 ST:荒谷かおり Production:(株)MATO Advertising Agency:(株)中国四国博報堂

 

元 自然のなかで撮影できるのは楽しいし、その作品が評価いただけるのはとても嬉しいです。
僕は広島が好きなんですよ。この土地の魅力を写真や映像にのせて日本中…世界中に見てもらえる仕組みを作りたいと思っているんです。

「若手のために、新しいレールを作るのも僕の仕事です」

 

ー経営とフォトグラファー業を兼務されているのですね。

 広島以外にも、今年4月に東京・三軒茶屋と福岡に事務所をオープンし、これから南麻布に映像エディットスペースをオープン予定です。

うちは若手スタッフが多いので、チャレンジできる場所や環境を作りたかったんです。スタッフがフォトグラファーとして育ってきたので、新しい仕事のレールを作るのも仕事だと思っています。

今は映像編集などの仕事は、地方でも作業できますし。東京で得た仕事を広島に持っていくことで、技術や経験が備わっていけば嬉しいなと。さらに自社だけでなく、広島全体に浸透していけばいいと思っています。

写真好きや写真を仕事にしたい人を増やしたいんですよ。そのための答えの一つが、経営者になることでした。チームで動くことで、ブランドの力も作れるし、会社内でクリエイティブな現場ではお互い刺激しあえる存在は大きいです。スタッフそれぞれに個性があって、全く違う写真を撮っているのが面白いですよ。

地方ならでは、を強みに変える

 

ーAPAアワード 2023では広告作品部門の審査員をされますね。

 個人的に地方から作品が集まればいいなと思っています。スタッフにも応募をすすめているし、事務所出身のフォトグラファーも毎年応募しています。

世の中にまだ知られていないけれど、面白い写真を撮る人はもっとたくさんいるはずだと思っています。といっても、応募にまで至る作品はそうそう生まれないですよね。ましてや、広告はクライアントがあってこそ。地方は企業の数も限られているので、企画が生まれる以前の段階…クライアントやスタッフに、面白いものを作りましょう! と、熱を作るところからスタートしています。

距離が近い分、自分の熱を伝えられれば、それが伝わって、良いものを作れるチャンスが生まれやすいのも地方ならではだと思います。まずは何事もチャレンジすることからですね。

 

 

元圭一

元 圭一 Moto Keiichi
1976年 広島県生まれ。操上和美氏に師事後、2006年 写真事務所CACTUS設立。2013年 株式会社Life Market設立。広告企画制作・写真撮影 CM映像制作を中心に活動。
https://lifemarket.co.jp/